もの・バラのある景観|見る・遊ぶ・体験する|ハウステンボスリゾート

見る・遊ぶ・体験する

くらしのなかの身近な花、バラ。ハウステンボスでは2005年から本格的に植栽を始め、「バラと街並みが調和した風景」創出に力を入れています。

1kmも続くバラの壁

レンガの街並みを背景にヨーロッパの庭園様式を表現したアートガーデン(花と緑のエリア)。その横を走る運河に沿って初夏、散策を楽しむと、バラの華やかな香りが全身を包んでくれます。それは花に関心が薄い人でも花本来のものとわかるほど高い香り。花壇はずっとドムトールン方面まで延びており、その規模は1kmにもおよびます。

壮観なのは花壇下の運河テラス壁面のバラ。壁面下まで花で覆われていて、まるで花でできた滝が運河へ注いでいるかのような光景が続きます。また、カナルクルーザーからの眺めも素晴らしいもの。進行方向に向かって左側が白、薄いピンク、濃いピンク、鮮やかな紅と変わっていき、花のグラデーションが楽しめます。

さて、バラがこの街にお目見えしたのは1997年でした。オープン5周年を記念してパレス ハウステンボス前庭の噴水のあるガーデンに植えたのが始まりで、以来、「ローズガーデン」として親しまれ、初夏と秋、華麗な花で訪れる人を楽しませてきました。

街なかへの本格的な植栽は2005年から。バラ園という限られた空間ではなく、ヨーロッパの街並みと調和した広がりのあるバラの風景を創ろうと、まずは運河両岸の花壇から着手。赤土や真砂土を使って土壌づくりから始め、初年度は蕾を摘むなどして、枝の成長に力を注ぎました。

壁面へ拡大したのは翌年のことです。それから丹精することさらに2年。花々にやっとボリューム感が生まれ、植栽から5年目にしてようやく観賞にふさわしい光景が見られるようになりました。

下に成長していく?

ところでバラはふつう花壇から上に伸びていくもの。しかし、運河テラスに花壇はありません。よく観察すると、バラはなんとテラス上の花壇から下へと伸びているのです。

ひょっとして、そういう品種でもあるのでしょうか。バラ植栽に当初から携わってきたパーク事業本部の本田耕三さんに話を聞くと、もちろんそんな品種はなく、使っているのは上に向かって伸びていくクライミング系(つるばら)と横に伸びていくランブラー系と呼ばれるもの。

では、どうしているかといえば、花壇から一旦上に伸びた茎をほぼ180度曲げて壁面に設けたワイヤー製の植物棚に結び付け、人工的に運河テラスに向けて伸びるよう誘引しているといいます。

「景観上、運河テラスに花壇は作れません。壁の高さは3m。けれど、壁面の下までバラで飾りたいと考えた末のことでした」

どこかに前例があったのですかと問うと「なかったですね」との答え。「でも、とにかくチャレンジしました。こんな光景が見られるのは世界でもおそらくハウステンボスだけでしょう」

敵は風と潮、そして病気

そうはいっても、ここまで育てるには運河沿いならではの苦労がありました。ひとつは風。植物は、風が起こす揺れのせいで根を地中に張れないと枯れてしまいます。バラも例外ではありません。特に運河沿いは風の通り道であり、少し強い風でも植えて日が浅ければ大きなダメージになります。そこで若い茎には1本1本、支柱を立てて根の安定化を図りました。

もうひとつは塩害です。運河は大村湾から水を引いているため、海水なのですが、それが風に舞って葉や茎にかかることがあります。植物にとって塩分は大敵。そのまま放っておくと枯れてしまいます。

ていねいに水洗いしなければなりませんが、やっかいなのはその見極め。台風や強風時は潮が直撃するのでわかりやすいのですが、荒天ではなくても風に煽られて潮をかぶることがあり、そのままにしておくと塩分で葉に茶色の斑点が浮いてしまいます。だから、兆候を見つけては地道に水洗いという繰り返しが続きました。

でも、最大の敵は病気。「育てる過程で最も神経を使ってきた相手といっていいでしょう」。バラは病気に罹りやすく、管理を怠るとすぐ冒されてしまいます。特にバラに多い黒点病やうどん粉病は雨、湿度が大好き。梅雨はもちろんのこと、運河沿いは風が吹かないなどの気象条件が重なると湿度が上がる場合もあるため、植栽当初から苗の間隔を考慮したり、生育具合を見ながら剪定したりして、風通しには大いに気を配ってきました。

こういった努力が実って運河では現在、80品種1200株が見事な花をつけます。「バラは大変でしょうとよくお客さまから聞かれるのですが、今は根も落ち着いたので、しっかり手入れさえしていれば問題はありません」。運河沿いという環境のため、確かにふつうの地植えに比べると余分なケアが必要ですが、そこはプロ、エリアごとに担当者を決めてきめ細かく管理しているため、塩害や病気とは無縁だそうです。

「植えてもすぐ枯らすという人も多いようですが、あまり難かしく考えず、もっとバラを好きになってください。それが上手に咲かせる一歩です」

今後はアトラクションタウン(アミューズメントとグルメの街)側運河沿いも充実を図る考え。アートガーデン(花と緑のエリア)をはじめ、街なかの植栽も拡充していきます。そして、2011年には「ローズ ペイサージュ国際バラコンクール」を開催。日本で4番目となるバラの国際コンクールを開くことで、ハウステンボスはバラを使った街づくりをいよいよ世界へと発信していきます。

2011年には国際コンクールが

ローズ ペイサージュとはフランス語で「景観をつくるバラ」という意味。ハウステンボスでは、2005年から取り組んでいるバラの植栽を通してバラを使った景観を提案していますが、その一環として国際的なバラのコンクール「ローズ ペイサージュ国際バラコンクール」が2011年5月に開催されました。国際コンクールとしては東京都神代植物公園、岐阜の花フェスタ記念公園、新潟の国営越後後丘陵公園に続く、4番目のものとなります。

香りの主はイングリッシュローズ

「バラの運河」の歩道を歩くと濃く漂ってくるバラの香り。その主はイングリッシュローズ系のバラたちです。イングリッシュローズとはオールドローズとモダンローズの交配によって生まれた品種で、日本で知られるようになってまだ10年ほどという比較的新しいタイプです。

アートガーデン(花と緑のエリア)には500種4000株

ヨーロッパの庭園様式を現代的な感覚で表現したアートガーデン。バラの植栽は充実の一途で、全長130mの水路「カスケード」両脇には白やピンクといった配色の演出が素晴らしいミニバラが咲き誇ります。